お猿の戯言 homosapiensaru's babble


2008年11月30日[日] 自分のちっぽけなことよ…。


個展が終わっていつも感じることだが自分に対して何かすっきりしないものが残る。
それは、制作へ向かう時間の在り方、使い方を変えなければ解決しないことはよくわかっているのだが、結局反省をしながらも毎年毎年よくない習慣を繰り返している。なんだかんだ分かっている風に言葉では言っているが、本当のところ、行動が伴わなくてはそれはあり得ないことである。一日に五分でも絵具をいじろう。絵具が無ければドローイングでもなんでもすればいい。単純なことだ。そういった行動が無くして絵描きと言えようか。このことは、画家モーリス・ルイスのことを知ればさらに深く心に刻まねばならぬことである。

そして楽しみにしていた、今日が最終日の「モーリス・ルイス展」に向かう。
ちば県佐倉市まで車を飛ばす。川村記念美術館だ。
彼は今やアメリカを代表する大芸術家であるが、生前は無名であった。
彼の作品はどれも大きいのだが、実際に制作していたアトリエはキッチンを転用した14×12feet(4.26×3.65m)という小さなものだった。空間の大小に関係なく優れたものは生まれるのだと知り、自分が恥ずかしくなった。やはり地道にコツコツやることだ。
ルイスの逸話はいろいろあってどれもが興味深い(ぼくが紹介するよりも美術館のサイトを見てください)。制作に対する姿勢、絵具や画布の扱い、これまでにない新しい境地を開拓する精神…などなど。特に頭が下がるのは、41歳でルイスがルイスたる絵を描き始めてから、50歳で亡くなる9年の間に600点以上の大作(ほとんどの作品が幅3mを超える)を作り出していることだ。彼の死んだ歳を過ぎてしまった自分のなんとちっぽけなことよ。そんな自分に無性に憤りと腹立たしさを感じてしまうのだが、嘆いていても仕方が無い。一歩一歩を大事にしながら歩いて行こうと、ルイスの大作の前で誓った。

→ http://kawamura-museum.dic.co.jp/exhibition/200809_morisLouis.html

《ヌン》1959年 国立国際美術館蔵<br>ⓒMorris Louis
《ヌン》1959年 国立国際美術館蔵
ⓒMorris Louis


2008年11月29日[土] 終わっちまった…。


あっという間に個展が終わりである。今回はなんとも早かった!
来廊してくださったみなさま、どうもありがとうございました。

額装は、凝り過ぎ!という苦言もいただきましたが、素敵という声が多かったです。
今回は、入口を入って正面に展示してあったアクリルの作品で一番左側の淡い緑色の作品がダントツに人気がありました。
そのことは自分としてはとても励みになります。私もそれが一番好きだったからです。次のステップに大いに参考にしようと思います。もっともっとよくしますよ!

《一息つきに行くところ》 2008年<br>ⓒHiroki Taniguchi

搬出を終えて、友人と酒を交わし、次の展覧会に向けての抱負などをくっちゃべって別れた後、一人最寄り駅に近いお酉様へ向かった。
今日は三の酉。いいねぇ、日本の祭りは。お参りし、熊手を買って帰路についた。




2008年11月25日[火] リクルートの'08年末チャリティ展オープニング


今年のテーマ(?)は、ビニール傘ということで、若手から大御所まで、辣腕クリエイターたちが夢の競演です。
今日は、そのオープニングパーティということで、自分の個展終了後に参加しました。年々オープニングパーティにいらっしゃる人数が減っているような…。
クリエイションギャラリーG8には大御所たちの傘が、そしてガーディアンガーデンには若手の傘が展示されています。この傘の売り上げはユニセフに寄付されますので、みなさん気に入った傘をご購入していただきチャリティに参加していただければと思います。12月19日まで開催されます。



2008年11月24日[月] 個展スタート!


いよいよ、始まっちまった。

なかなかパーフェクトな空間を創出できない。相変わらずまとまりのない展覧会である。
しかしそれでも少しずつ自分の中に何かが積み上げられていくのは感じている。

作品を展覧会場に並べ終わったとき、作家は次の展覧会のことを考えているものだ。いやもっと前のタイミングだ。今回の展覧会の作品を描き終えたとき、あるいはその途中で次の展開を思考している。見えてきたこと、二年後に開花させよう。

ここだけの話、そうは言いながらも自分の個展の空間は居心地がいいものだ。この空間の中にずーっと籠って居たいのに、なんだか仕事が忙しくて、なかなか在廊できなそうで辛い!



2008年11月16日[日] 大琳派展


午後から自己推薦入学試験だ。もうそんな時期がやってきた。一年が早い早い。年々加速度的に時の経つのが早まっているような気がするのは年齢のせいか?

…と、しみじみするよりもその前に思い切って今日まで開催の「大琳派展」に行ってしまおう!と決心し、家を早目に出る。上野は東京国立博物館平成館だ。

今回の目玉は、琳派の代表選手である宗達・光琳・抱一・其一の描いた四つの風神雷神の屏風絵が同時に並んだことだろう。俵屋宗達が元祖の風神雷神図屏風を、宗達をリスペクトした光琳が同テーマを光琳の解釈を入れながらも写す。その後、光琳をリスペクトした(なんと!宗達の存在を知らなかったらしい)抱一は光琳の描いたそれを模倣する。そして抱一の一番弟子である其一が同テーマを其一の解釈で描く。
一目瞭然、ぼくは宗達である。大胆な構図。抑えた渋みのある色彩とタッチ。空間のダイナミックさが群を抜いている。澱まず、おおらかで屈託がなく、ユーモアさえ感じさせる線やら彩色が独特の観察眼とともに絶妙な造形物を出現させる。宗達の作品に出逢うと、そこにはいつでも笑顔があり、たおやかな風を感じるのである。

本阿見光悦の茶碗もなんともよかった。

しかし自分は、琳派見過ぎているので、今回の展覧会はあまり満足の行くものではなかったなぁ。

→ http://www.tnm.go.jp/jp/servlet/



2008年11月15日[土] 作戦遂行!


今度の個展に新たな作戦を考えた。
実験的な作品を3点展示してみようと思っているが、みなさんの反応は如何なものか?
楽しみでもあり、不安でもあり…。
まぁ、いつものようにまとまりのない、バラバラとした展示になりそうだなぁ…ううっ。まぁね、とにかくぎりぎりまでやるまでよ!



2008年11月14日[金] 額縁店に発注!


いつも額を注文する額縁店にバーニーズニューヨーク製の棹が入ったと連絡が入っていたのだが、ようやく顔を出すことができた。新たな額を注文。黒い額にしようと考えていたのだが、お店の人のお薦めでちょっと変わった色の棹にしました。なかなか面白い感じになりそうだ。出来上がりが楽しみだ。



2008年11月11日[火] 蜷川実花展&第7回TIS公募 審査二日目です!


専門学校の生徒たちと、蜷川実花展に行く。「エギジビション」という授業なので何か観ようということになり、本当なら絵の展覧会に行くのが筋なのだが、受講生たちが全員女子なので、ならば受けそうだなぁと思い、写真展ではありますが初台の東京オペラシティアートギャラリーへ向かう。
写真集などでよく見かける写真とは違うタイプの(といってもぼくが知らないだけなんだろうけど)普段の素のままの蜷川氏の視点を感じる写真を観ることができてよかった。ああ、この人は本当に写真を撮ることが生きることなんだと理解した。
確か、4番目の部屋がよかったな。そこの写真たちは彼女の写真家としての眼が一番生きているものでした。
この展覧会は、写真がもちろんよい(と言いながら個人的には、実は、女の子たちを撮ったものはあまり趣味ではな~い)のだけど、展示の仕方に凝っていて見せ方が面白かった。自分が個展前なもんだからカツ~んといい刺激をいただいちゃいました。ちょっと新たなアイデア湧きましたよ。さて、どうするぅ!?

まだ、観覧中の生徒たちを会場に残し、TISの審査会場へ急ぐ。

第7回TIS公募の審査の二日目だ。
150点ほどの作品が昨日の一次審査の段階で残っている。
おお、我が研究室の学生も健闘しているじゃないか!しかし、この後、どうなることやら…。審査が進むに連れ、あいつもだめ、こいつもだめとしょぼんな結果が見えてくる。選外になっていった学生たちにどう声をかけるべきか悩む。

そうこうする内に賞を決めるところまで来た。
ぼくの関係者は、6名が入選することができた。彼らの作品は、公募展に展示される。

そして賞を決める段になってびっくりである!
3年生の教え子がなんと、銀賞に輝いてしまったぁ!
しかも、15名の審査員の内2名の審査員が彼の絵を「MY BEST ONE」に選んでくださっていたのだ!
確かにぼくも彼の絵を面白がっていたのだが、この結果にはちょいと驚きである!
だが、審査員の一人として思うことは、彼の絵は、やはり当然であるがしっかりと選ばれているということだ。なんの操作もない実力票である。

自分としては、6名という数字がどれだけのものかわからない。だが、50点近い作品が入選以上の作品として残った内の6名ということであれば、まずますの数字であろうか。これはやはり指導の賜物か(笑)?
落ちたやつも、入ったやつもみんながんばろ~じゃないか!浮かれている場合じゃないし、沈んでいる場合でもないぞ!



2008年11月10日[月] 第7回TIS(東京イラストレーターズ・ソサエティ)公募の審査の日です!


第7回TIS公募の審査の一日目だ。応募総数2600点弱。
今日は、一次通過の作品を決める。我が東京工芸大学の学生たちも応募している。
おお、あいつも出していたか!こいつもそうであったか!…と数回に渡る審査の中で、学生たちの努力振りに胸を熱くしたり、ああ、やばい!こんなんじゃ入選も危ないぞ!などと一喜一憂しながら一日目の審査を終えた。
何回か見ている内に、果たして誰が残ったのか把握しきれなくなってしまった。なかなか自分の思うように票は動かない。
誰が残ったのだろう?明日の二日目で入賞まですべてが決まる。やはり審査はむずかしいと感じた。




2008年11月4日[火] DM投函!


ようやく、個展のタイトルも決まりDMを発送することができた。やれやれ…と思うのも束の間、肝心の絵が全然でございます(汗・焦)…。

こういうときに限って仕事が入ってくるんですね。断る訳にもいかず、どんどん首が絞まって行く~!でも幸せじゃぁありませんか、こういう不景気にね、お仕事をいただくなんてね。
神はその人が乗り越えられない試練は与えないという。もちろん仕事も手を抜くことはできない。大学の仕事もある。おまけに今月は専門学校でも教えなければなりませぬ…ううっ。とにかくしゃかりきにやるっきゃない。

今回、個展のタイトルは難産だった。前回のシロタ画廊での個展にはタイトルをつけなかった。まぁそれでもいいのだが、気持ちのけじめ的にはやっぱり欲しいのだ。いくつか浮かんでは没にした。「融通無碍」にする直前までつけていたタイトルは結構気に入っていたのだが、これはまた別の機会に使用することにしよう。
「融通無碍(ゆうずうむげ)」とは、exhibitionのところでも触れましたが、何ものにもとらわれることなく自由であること・さまであり、「融通」は、その場その場で適切な処置をとること。また、とどこおりなく通ずること。「無碍」は、何ものにも妨げられないこと。何の障害もないこと。また、そのさまとあります。

普段、いろんなことに囚われている自分を感じます。絵画なのか、イラストレーションなのか。アートなのか、デザインなのか。具象なのか、抽象なのか。紙なのか、布なのか。アナログなのか、デジタルなのか。静止画なのか、動画なのか。…と、ねちねちと思い悩み、なかなか融通無碍になんて行かないのですが、気持ちは常に融通無碍でありたいものです。本来、人は自由であるのですから、ねっ!