お猿の戯言 homosapiensaru's babble


2015年2月24日[火] 光に



光に魅せられてから
恐る恐る見るものたちは
次元の壁を超えて
薄いレースの向こう側

こちらとあちらを 分けるように 
蝉時雨のようなシャワーを浴びせかける

眼を細めたら 見えてくるもの
眼を見開いても 見えてこないもの

最初から 期待などせず
眼を閉じて 感じるもの
ありのままに 受け止める

ぼくのいる場所が
カーテンの向こう側に移動する





2015年2月15日[日] 御舟のことば



画家、速水御舟のことば。

 私は、かつて宗教的概念からヒントを得て、その神秘感を絵画に表現すべく随分モチーヴを尋ね廻ってみたことがあった。夜の寂寞たる大地の底から秘かに曙の微動はめぐり、みそらには明星の一群が美しく煌めいていた。

 それから数年後に一つの花の写生を克明にしてみて、はじめて、かかる微小なものにさえ、深い美が蔽されていることを発見してひそかに感嘆した。げに絵画こそは、概念からいづるものにあらずして、認識の深奥から情熱が燃えあがって、はじめて造り得らるる永遠に美しき生命の花であろう。





2015年2月7日[土] 仁阿弥道八展



仁阿弥道八展開催中のサントリー美術館へ。

道八は、お茶の世界や陶芸の世界では有名だが、意外と一般的には知られていない。こうしてまとまった展覧会はなかったんじゃないかと思う。

自分の中では、乾山(尾形光琳の弟で、陶工、絵師として名高い。その師は京焼の重鎮、野々村仁清。道八は乾山亡き後、30年後に生まれている)の写しの人というイメージでいた。それが払拭もされたが、やはり、乾山の凄さの再確認ともなった。

具象的なモチーフを立体的に施すということ(香合、手焙、炉蓋等に観られる表現)は乾山にはなかったので、そこは目新しかったし、愉快で楽しく感心もしたが、作家の作品から見えてくる思想ということに触れるとなれば、どうしたって乾山には敵わない。乾山のあの大胆なアプローチから生まれる心地よい朴訥な味わいのあるメタモルフォーゼには、なんともおおらかな繊細さが潜んでいるから小癪だ。こうした表現にはなかなかお目にかかれない。乾山とは一体何者なのだろうか?道八を観ながら、結局は乾山について思いを馳せることとなった。

ただ、道八の急須は興味深い。特に江戸時代の写本「足利家茶瓶四拾三品図録」と呼ばれる急須の図解集の中から道八が制作した急須があるが、これが道八の中でも究極の極みだと私は思う。この、文献上はあるとされていたが現物が見つからなかった幻の9点の急須が最近発見された。2014年11月11日に放送された「なんでも鑑定団」に登場し、鑑定の結果、本物であることが判明した(なんと!2500万円の値がついた。単純にひとつ280万円弱になる!)。

 → http://www.tv-tokyo.co.jp/kantei/kaiun_db/otakara/20141111/03.html
 → https://twitter.com/fugenmonju/status/532328493690781696

これに近いタイプの急須が展覧会には1点展示されていたが、実物を観た訳ではないがこの9点の魅力には叶わない。再放送をTVでたまたま観ていたが、瞬間「欲しいっ!」と思わせる魅力があった。魅力というよりは、魔力と言った方が正しいが、そのものたちには魔といったものとは正反対の場所にいるような、むしろ華奢で清楚で朴訥としたちょっぴり変わったひ弱な聖人(観た感じ爺ちゃんぽいので仙人か?)といった面持ちをしている。晩年の作だそうだが、私もこのように枯れたいものだ。まぁ、これも写本からの写しと考えるとう〜むと唸りもするが…。

この展覧会は、3月1日[日]までサントリー美術館にて開催中。

 → http://www.suntory.co.jp/sma/exhibit/2014_6/index.html





2015年2月5日[木] 赤ちゃん絵本



赤ちゃん絵本を依頼された途端、「胎内記憶」についてのサイトが眼に飛び込んできた。
自分のためにFBにMEMOすると、すぐに、映画「かみさまとのやくそく」の情報をコメントしてくれる御仁が!
その映画のこと調べたら上映しているじゃないですか!しかも渋谷で!
こういうのって起こりますよね!強く念じると動き出す。
昨年末に、今年後半は絵本だな…と口にしていたらこういう流れに…。
いやぁ〜実におもしろい!おもしろい!





2015年2月2日[月] 個展を終えて思うこと



今日、サボアの搬出が終わり、これから芳名帳のチェックやら、お買い上げいただいた作品の記録を取ったりと、展示後の事務仕事が待っています。

グラフィックデザイン、イラストレーションのフィールドでは具象的な絵を扱う仕事をしています。また、ファインのフィールドでは、抽象の仕事をしています。どちらも谷口です。

谷口は谷口として死にたいものです。西洋の文脈や東洋の或いは日本の文脈だとか、ソリッドに思考し過ぎず、自然に受け止めながら制作をして行きたいものです。原始に戻ろうとはしませんが、根っこのところは意識せねばと考えます。

世界には興味深いものがたくさんあります。その共通する面白さを咀嚼し、表現できればと思うのです。
自然に、自然に。





2015年2月1日[日] 個展終了



MAYA、SAVOIR VIVREの二つの個展が無事に終了しました。
両会場にたくさんの方々がお越しくださいました。心より御礼申し上げます。

二会場での開催ということで、作家としては気概をお見せしますよォ〜なんて息巻くものの、観に来られる方にとってはご迷惑なことだったよなぁと少々反省もしています。

会場でお会いできた方々からは、有意義なお話をたくさんお聞きすることができ、大変充実した時間を過ごすことができました。

次回は、ファイン系の個展となります。四月の後半と、もうすぐなんですが、銀座のコバヤシ画廊での開催となります。また、ご案内させていただきます。

いただいた励ましを胸に、次に向かって、ますます精進いたします。ありがとうございました。