お猿の戯言 homosapiensaru's babble


2010年6月26日[土] 自然の造形



「あっ!蟷螂!」

玄関に生けてある紫陽花の色が日々変わっていく。
今日また一段と濃くなっているのに気づきしばらく眺めていたら
紫陽花の上に孵化してまだ日の経っていない蟷螂の赤ちゃんを発見した。

こんなに小さいのに揺るぎない、そして無駄の無い、
しかもいかにも蟷螂らしい特徴的なフォルムが与えられている。
そこには美と力とが拮抗する極めて高次の造形が見てとれる。
しばし大自然の造り出すフォルムに嘆息する。


蟷螂の赤ちゃんがいる!


2010年6月20日[日] 日本民藝館


日本の美術作品は、全体的に創造する意識が神仏の世界にほど近いからなのか、どこか求道的で、品位を重んじるためテンションが高く、すーっとしたシビアさを内包するものが多い。それは、観た者の精神を高揚させる。それでいて、長く接していても決して疲れることの無いたおやかな面も持ち合わせているから凄い。

それと比較して韓国の美術作品は(白磁や青磁には少し違うものを感じるが)、形や描写などぐずぐずでこんなんでいいの!?というくらい思わず微笑んでしまう大変おおらかな作品が多い。
韓国に行ったこともないし、韓国の美術作品の全体を見渡せている訳ではないから無責任なことは言えないが、これまで見知っていることを思い出す限り、奔放で自由で何ものにも囚われていない朴訥な姿勢がすべてのジャンルに浸透している。いい味を持ちながら歪んでいるとさえ言えそうな未分化な良さがそこにはある。
自分にとっては、エジプト美術の絵画の面白さに近いものを感じてしまう。

これでいいんだよ〜、なんだっていいんだよ〜と微笑みかけてくるのだが、安心してはいられない。簡単そうでこれがそうやすやすと真似のできないなんとも憎い様式なのだ。

以前に、刷毛目鉄絵草花文俵壺に描かれたような一連の植物の文様を観たとき、過去世の自分が描いたんじゃないかと思わせるくらいに縁を感じてしまったのだ。


日本民藝館では、朝鮮陶磁ー柳宗悦没後50年記念展を6月27日[日]まで開催中だ。

 →日本民藝館

この美術館はいつ行っても面白い。そう、ここではいつもスケッチを欠かせない。展示されているものたちから行く度ごとに自分の創造的ルーツを喚起させられ、自分の奥底に仕舞われた感性の原石を揺り起こされ、研磨され、刺激してくれるから、それを描き留めて置かない訳にはいかない。






2010年6月18日[金] 啓示


学生を指導していると、彼らの絵の中に自分を見出すことがある。

それはまるで創造主から「オマエ ガ ソウイウ フウ ニ カケバ イイ」と啓示を与えられているかのようだ。

これまでに通過してきた自分の内外の世界にいくつかの固まりとして浮遊していた創造のクリスタルのかけらのようなものがあったことを思い出させる。

遠くに置き忘れてきてしまったそれらのキラキラとした原石を今から取り戻し磨き上げる作業に就くのだぞと心中に語りかけてくる。




2010年6月16日[水] 芯が替えられる4色ボールペン

ボールペンの頭の方から見てます
ボールペンの頭の方から見てます



兼ねてより4色ボールペンを必要として使ってきたが、なんともダサイデザインのものが多い。
ルイジ・コラーニあたりにデザインさせたら面白い4色ボールペンが出てきそうだが、現在スマートなものは皆無だ。

しかも無駄が多い。ほとんどの4色ボールペンが黒の芯から無くなって、ほぼ新品に近い状態の緑のインクを残したまま、他の色が使えなくなるのでやむなく新品を買うことになる。せめてもの願いとして芯を替えることができたらと考えていたら、すでにPILOTが売り出していた!

先日人から聞いて買いに行くと、ペン先の太さが0.3やら0.5やらと3種類(?)くらいあり、色が10色以上あってなかなかよさそうだ!
まずはお試しと、芯を0.3mmの太さにして、右の写真のような色をカスタマイズしてみた。
本体の頭の蓋を持ち上げ、それぞれの芯をそこから入れてでき上がりだ。

…と、しばらくは物珍しく遊んでいたが、何か物足りない。インクだ!
これは油性のインクを使ってできたスタンダードなこれまでのボールペンではなく、「HI-TEC」という商品に使用している染料系の水性インクを使ったペンなのだ。まぁこれはこれで良さはあるのだが、これまでのボールペンと同じ油性インクで作られていたらなおうれしい。油性ボールペンのあのうねりのある筆触がたまらんのです。




2010年6月11日[金] 楽しい宴

ⓒhiroki taniguchi 1984<br>第5回日本グラフィック展公募用<br>ポスターのためのイラストレーション
ⓒhiroki taniguchi 1984
第5回日本グラフィック展公募用
ポスターのためのイラストレーション



トムズボックスの土井さんとイラストレーション誌の切明編集長と宴。

土井さんに絵本の授業をお願いして何年になるのだろう。
今年は前期の金曜日が担当の日で、久々に呑もうかと以前から約束をしていた。
本当は先週の金曜日だったのが、土井さんの都合で今週に延期になった。

過日の荒井良二氏のオープニングでお二人にはお会いしていたが、切明氏とはなんと今週の火曜日にHBギャラリーで遭遇!研究室の3年生を引き連れて青山のイラストレーション系のギャラリー巡りをしているところに出会した。

「先週は、土井さんと呑んだんですか?」と尋ねられ、「一週間延びて今週になったんですよ。ぜひご一緒にいかがですか?」と返し、今日の宴が実現した。

いろいろな話をした。
最近の若いイラストレーターの話や大御所のイラストレーターの話、絵本の話やら、きな臭〜い話などなど、楽しかったなぁ。収穫もあって実り多い宴だった。

切明氏は、一般大学にいながら桑沢デザイン研究所に通ったという変わり種。
今でも、マイブックにスケッチ(ドローイング?)を電車の中などで実践しているから驚いた!その場で見せていただいたが、すごいすごい!

そうそう、お二人に"HIROKI GOODS"をプレゼントすることを約束したんだっけ。忘れないようにしなくっちゃ。




2010年6月7日[月] 作田えつ子展「in the forest」を観る

ⓒetsuko sakuta
ⓒetsuko sakuta



ギャラリーハウスマヤへ行く。
久し振りだ。

今日は、作田えつ子さんの個展「in the forest」のオープニングパーティだ。
二次会へ出るつもりで時間ギリギリに顔を出したら怒られた。

ぼくは、ペインティングよりもドローイングが好きだったなぁ。
特にキャラクターっぽいものを描いた作品が大好きだった。
一匹ね、連れて帰りたいのがあったんだなぁ。他にもう一匹いたな。
ああいうのなかなか描けないですよね。天才だと思う。

ペインティングや銅版画は敢えて言っちゃうけど、こうするとそんな感じでしょうって頭で造っている感じがしてどうしちゃったのかなぁって思った。作田さんの切り口ってもっとすごいと思うんだけどなぁ。

と、いろいろ言っておりますが、こういう人少ないので大事にしたいですね。




2010年6月4日[金] 細密画



美學校でお世話になった田嶋徹氏の展覧会を観に行った。
高島屋新宿店の10階にある美術画廊で7日[月]まで開催されている。

細密画というのは点描の集積でそれはモティーフをただリアルに描写しているというよりはミクロ単位で覆われているモチーフの周囲にある光の粒子や空気の粒を紡ぎだしているという感じだ。また、恐らく気の遠くなるような時間もまたそこに凝縮されている。

デザインというフィールドにいるとこの同じ時間を体感するのがむずかしいと感じる。
闇雲に時間をかけることはよくないが、やはり時間はかけられればかけられる方がいい。特に精神的な時間は絶対的に必要だ。

田嶋氏が絵に向かっている時間を肌で感じてみたいと思った。


ⓒtoru tajima 「水晶の舟」40.9×53.0cm

ⓒtoru tajima<br>「水晶の舟」40.9×53.0cm


2010年6月3日[木] 朗報

ⓒhiroki taniguchi ムクムク先生<br>「タニグチィ ガンバレェ〜!」
ⓒhiroki taniguchi ムクムク先生
「タニグチィ ガンバレェ〜!」



研究室でパソコンに向って仕事をしていたら、新しいメールが入ってきた。

「先生がデザイン学科VCコースにおいてベストテイーチング賞を授賞することとなりました。」…とある。

3月の卒業式で、各先生の授業の教え方についてのアンケートを実施したその結果だという。
特に工夫をしている訳じゃないけれど、ひとりひとりに向ってもの申していたことが奏したのか…?

素直にうれしいなぁ。励みになります。卒業生のみなさん、ありがとう!